Raspberry Pi(ラズベリーパイ)は教育や趣味のプロジェクトからプロフェッショナルな用途まで幅広く活用されるシングルボードコンピュータです。
気軽に入手できることから、特に社内SE(システムエンジニア)にとっては新しい技術やスキルを学ぶための優れたツールとなります。
本記事ではRaspberry Piを使用したさまざまなプロジェクトの可能性と、AWSやGCPといったクラウドサービスとの比較について詳しく紹介します。
Raspberry Piとは?
Raspberry PiはイギリスのRaspberry Pi財団によって開発された小型のシングルボードコンピュータです。
価格が非常に手頃で、幅広い用途に対応できることから世界中で人気があります。
Raspberry Piにはさまざまなモデルがあり用途に応じて選択することができます。
2020年頃から在庫切れやプレミア付きの転売が続き入手しにくい状況が続いていましたが、最近は入手しやすい状況になっています。
Raspberry Piでできること
自宅サーバーの構築
Raspberry Piを使用して自宅にサーバーを構築することができます。
これには以下のような用途があります。
- Webサーバー: ApacheやNginxをインストールしてWebサイトをホストすることができます。小規模なテスト環境としても最適です。
- ファイルサーバー: Sambaを使用して家庭内ネットワークでファイルを共有できます。これにより、データのバックアップやアクセスが簡単になります。
- メディアサーバー: PlexやKodiを使用してメディアサーバーを構築できます。これにより、家庭内のデバイスで映画や音楽をストリーミングすることができます。
プログラミング学習
Raspberry Piはプログラミング学習に最適なプラットフォームです。
PythonやJavaScriptなど、さまざまなプログラミング言語を学ぶことができます。
また、Raspberry PiにはGPIO(汎用入出力ピン)が搭載されており、ハードウェアプログラミングも可能です。
- Python: PythonはRaspberry Piの公式推奨言語であり、初心者から上級者まで幅広く学べる言語です。Raspberry Piを使ってセンサーやLEDを制御するプロジェクトに最適です。
- Scratch: Scratchはビジュアルプログラミング言語で、初心者や子供向けのプログラミング教育に適しています。Raspberry Piで簡単にプロジェクトを作成できます。
IoT(モノのインターネット)プロジェクト
Raspberry PiはIoTプロジェクトの中心として活用できます。
センサーやアクチュエータ(モーター等の駆動部品)を接続し、データを収集・分析するシステムを構築できます。
- 環境モニタリング: 温度や湿度、気圧などの環境データを収集し、分析できます。
- ホームオートメーション: スマートホームデバイスを制御し、照明や家電の自動化を実現できます。
ネットワーク学習
ネットワークの基礎を学ぶためにもRaspberry Piを活用することができます。
例えば、小規模なネットワーク環境を構築してネットワークの設定やトラブルシューティングを学ぶことができます。
- VPNサーバー: OpenVPNをインストールして、プライベートネットワークを構築し、安全にリモートアクセスを行うことができます。
- DNSサーバー: Pi-holeを使用して、広告ブロック機能を備えたDNSサーバーを構築できます。これにより、ネットワーク全体で広告をブロックすることができます。
どのモデルを買うべきか
予算に余裕がある方は…
勉強をするために、どのモデルを買うべきか…
予算にやや余裕がある方はRaspberry Pi 5 8GBを買ってしまえばまず間違いないです。
他のモデルに比べ以下のメリットがあります。
- 最新のプロセッサ: より高速なクロック速度と最新のアーキテクチャを採用したプロセッサを搭載。これにより、処理能力が向上し、多くのタスクを同時に処理できるようになります。
- 増加したメモリ: 最大8GBのRAMオプションがあり、マルチタスクやメモリ集約型のアプリケーションにも対応できます。
- Wi-Fi 6: 最新のWi-Fi規格に対応し、より高速で信頼性の高いワイヤレス接続が可能です。
- Bluetooth 5.0: デバイス間の通信速度が向上し、より多くのデバイスを同時に接続できます。
- USB 3.0ポート: 高速なデータ転送が可能なUSBポートを複数搭載。外部ストレージや周辺機器の接続が容易です。
- PCIeスロット: 新たにPCIeスロットを搭載し、高速な拡張カードを使用することで、さらなる機能追加が可能です。
- 低消費電力: 新しいプロセッサと回路設計により、消費電力が抑えられており、長時間の運用でもエネルギーコストを低く抑えることができます。
予算に余裕がない方は…
Raspberrypi 3 ModelBでも様々な経験を積むことが出来ます。
他のモデルに比べ以下のメリットがあります。
- 低コスト: Raspberry Pi 3 Model Bは数千円程度で購入可能であり他のモデルに比べて非常に安価です。
- 高コストパフォーマンス: 低価格にもかかわらず十分な性能を持っており、さまざまなプロジェクトに活用できます。
- クアッドコアプロセッサ: 1.2GHzのクアッドコアプロセッサを搭載し日常的なタスクや軽量なアプリケーションをスムーズに実行できます。
- 1GB RAM: Raspberry5や4に比べると小さく見えますが、実際には十分なメモリ容量で、マルチタスクや簡単なサーバー運用にも対応可能です。
AWSやGCPとの比較:固定費用のメリット
初期投資と運用コストの比較
Raspberry Piの最大の利点の一つはその低コストです。
初期投資として一万五千円程度で購入でき、運用コストも非常に低いです。
これに対し、AWSやGCPなどのクラウドサービスは使用量に応じた従量課金制となっており、特に長期間の運用や大規模なデータ処理を行う場合はコストが増加する可能性があります。
固定費用のメリット
Raspberry Piを使用する最大のメリットの一つは費用が固定であることです。
一度購入すれば追加のハードウェア費用は発生せず、電気代のみが運用コストとなります。
これにより予算管理が容易になり、コストを予測しやすくなります。
- 予算の固定化: クラウドサービスでは使用量に応じてコストが変動しますが、Raspberry Piは固定費用のため予算を安定して管理できます。
- 低コストの実験環境: 新しい技術やシステムのテストを行う際にRaspberry Piを使用することで、クラウドの利用料金を抑えながら実験を行うことができます。
スケーラビリティの比較
クラウドサービスはそのスケーラビリティ(拡張性)が大きな利点です。
大規模なデータ処理や高負荷なアプリケーションにはクラウドが適していますが、Raspberry Piは小規模なプロジェクトや学習目的に最適です。
- スモールスタート: 小規模なプロジェクトから始め必要に応じてクラウドサービスに移行することで、コストを抑えつつ学習と開発を進めることができます。
- クラウドとのハイブリッド運用: Raspberry Piをローカルで使用し、必要に応じてクラウドサービスを併用することで効率的なシステム運用が可能です。
まとめ
Raspberry Piは社内SEが新しい技術を学び、スキルを向上させるための優れたツールです。
低コストで多様なプロジェクトを実現できるため、学習や実験に最適です。
CPUやメモリの機能がどんどん強化され、最新のRaspberry Pi5やRaspberry Pi4はEC2やGCPの最小ランクのサーバーよりも高機能です。
さらにAWSやGCPといったクラウドサービスと比較して固定費用で運用できる点も大きなメリットです。
小規模なプロジェクトや学習目的にはRaspberry Piを活用し、大規模なプロジェクトや高負荷なアプリケーションにはクラウドサービスを組み合わせることで効果的なITインフラを構築することができます。
Raspberry Piを使ってぜひ自分だけのプロジェクトに挑戦してみてください。
誰にも迷惑をかけずに誰にも文句を言われない自分だけの開発環境で、多くの失敗や成功体験を重ねることで、確実にあなたのエンジニアとしてのスキルが磨かれることでしょう。